公務員が個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入するメリットと注意点

公務員が個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入するメリットと注意点

老後資金の貯蓄を目的とした「iDeCo(個人型確定拠出年金)」ですが、2017年1月からは公務員でも加入できるようになりました。

公務員でもiDeCo(イデコ)に加入するメリットはあるのでしょうか? 実際、公務員の加入者は増えているのでしょうか?

今回は、公務員のiDeCo(イデコ)の加入率の推移とiDeCo(イデコ)のメリットについて解説します。

公務員のiDeCo(個人型確定拠出年金)加入者が増えている?

近年、公務員のiDeCo(イデコ)加入者は増加傾向にあります。
もともとiDeCoは、「個人型DC」として2001年に導入された際、自営業者や企業年金のない従業員に限定された制度でした。2017年1月にiDeCo(イデコ)という愛称がついてからは公務員などへ加入対象が大幅に拡大し、加入者数も大きく伸びています。

大和総研による「会社員・公務員の iDeCo 利用拡大に期待」という資料によると、2016年12月の時点でのiDeCoの加入者はおよそ31万人でしたが、加入対象が拡大された2017年3月には約43万人に急増しています。さらに、2020年2月現在の加入者数は約153万人まで増加。加入対象者数に占める加入者の割合は2.3%になっています。

加入者の内訳を見てみると、公務員は33.3万人で全体の約22%。公務員全体での加入率は17年3月時点では全体の約1%でしたが、毎年右肩上がりで増加しており、2020年2月時点では7.4%となっています。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の特徴とは?

iDeCo(イデコ)は個人が自分で掛金の積立て額を決め、自分で運用する私的年金制度です。その仕組み、特徴について理解を深めておきましょう。

iDeCo(イデコ)の仕組みや加入条件

この制度では、職業(国民年金保険の被保険者区分)等によって、積立てできる金額に上限があります。公務員の場合、上限は月額1万2,000円です。
掛金の積立て額は上限まで自分の自由に決められますが、月々の最低積立額は5,000円、以降は1,000円単位で設定できます。

運用にあたっては、「自分が許容できるリスクのレベル」「目標のリターン」を定めたうえで運用商品を選ぶとよいでしょう。掛金をどの運用商品にどれだけ配分するかの比率(ポートフォリオ)も自分自身で決定します。

積立てた年金資金は途中で引き出すことは原則できません。老齢給付金として60歳以降受取ることができます。

他の年金制度へ移換可能

転職や退職をした場合、これまでiDeCo(イデコ)に積立てした年金資産を他の制度へ移すことができます。

たとえば転職先の企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入する場合は、「加入者資格の喪失」及び「資産の移換」の手続きによって、iDeCo(イデコ)の資産を転職先の企業型確定拠出年金(企業型DC)に移すことができます。

企業型確定拠出年金(企業型DC)の事業主掛金額が少ない場合や、マッチング拠出(加入者も掛金を拠出できる制度)を利用しない場合は、引き続きiDeCo(イデコ)に加入し併用することも可能です。

いずれの場合も国民年金の被保険者種別や登録事業所の変更手続きなどが必要となります。

公務員がiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用するメリット

では、公務員がiDeCoを活用するメリットはどのようなところにあるのでしょうか。

支給水準の低下に対応できる

まず、公務員とiDeCo(イデコ)の関係を考えるにあたって前提となる知識を押さえましょう。

公務員の年金制度は2015年に大幅な変更が行われています。従来、公務員は「共済年金」と呼ばれる独自の被用者年金に加入していましたが、2015年に厚生年金保険に統合されました(被用者年金制度の一元化)。官民格差の解消を目的とした取り組みであったため、共済年金独自の上乗せ年金だった「職域加算」が廃止され、代わりに「年金払い退職給付」が創設されています。

職域加算と年金払い退職給付を比較してみましょう。

職域加算 年金払い退職給付
  • 全て終身年金として支給される
  • 保険料負担はなし
  • 現役で働いている人が払い込んだ保険料が、退職者に支給される(賦課方式)
  • 65歳から支給が開始される(※1)
  • 半分が有期年金(※2)として、残りが終身年金として支給される
  • 新たに保険料負担が発生する(※3)
  • 保険料を自分で積立て、退職後に受取る(積立方式)
  • ※160歳まで繰り上げ、または70歳まで繰り下げて受給することもできる。
  • ※210年間または20年間から選択する。
  • ※3保険料率の上限は労使合わせ1.5%

制度の変更にともない、支給水準も下がることが指摘されています。老後の資産形成として、積極的にiDeCo(イデコ)の活用を検討しましょう。

所得税と住民税の負担を減らすことができる

iDeCo(イデコ)の掛金の積立てが全額控除されることで課税所得が減少し、当年分の所得税と翌年の住民税の負担が軽減されます。

毎月1万2,000円の掛金を積立てした場合、1年で14万4,000円が所得控除となります。

例えば年収600万円(課税所得が300万円)の場合、所得税・住民税負担軽減額は、所得税率10%、住民税率10%(住民税率は一律10%)の20%が適用されるため、税負担軽減額は年間2万8,800円(14万4,000円×20%)となります。
1年間で2万8,800円となると、30年間で86万4,000円の所得税・住民税が軽減される計算です。

受取り時に控除枠がある

年金を受取る時にも優遇があるのがiDeCo(イデコ)の特徴です。

  • 一時金受取=退職所得控除
  • 年金受取=公的年金等控除

例えば一時金で受取る場合、退職所得として以下のように税金を計算します。

退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2

退職所得控除額の計算式は、勤続年数に応じて以下のとおりです。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
※80万円に満たない場合は80万円
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

iDeCoの資産を一時金で受取る際は、掛金の払込期間が勤続年数(退職手当等の他の制度から資産の移換を受けた場合は、移換された資産額の算定の基礎となった期間を含みます)とみなされます。

退職所得控除の継続年数:30年
退職所得控除:800万円+70万円×(30-20)=1,500万円
課税所得:(1,500万円-1,500万円)×1/2=0万円

課税所得が0円になるため、1,500万円を受取っても納税は必要ありません。

一方の公的年金等控除は、65歳未満の方は年間60万円以下、65歳以上の方は年間110万円以下が非課税になります。

運用益が非課税になる

通常は金融商品を運用して利益を得ると、20.315%が運用益に課税されます。しかしiDeCo(イデコ)の場合は運用益が非課税のため税金がかからず、運用益の全額を再投資することができます。

公務員がiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用した際のシミュレーション

iDeCoの掛金限度額は職業等により異なります。公務員の方は月額1.2万円(年間14.4万円)です。短期間で多額の資産形成をするには向いていませんが、コツコツ積み立てて将来に備えるには有効な手段となります。NISAなど他の制度と組み合わせて検討するとよいでしょう。

では、公務員の方がiDeCo(イデコ)に加入し、上限額まで積立てて運用した場合、将来いくら受け取ることができるかシミュレーションしてみましょう。

前提条件は以下のとおりです。

  • 年齢:30歳
  • 年収600万円(課税所得:300万円)所得税率10%
  • 掛金の積立て:毎月1万2,000円
  • 想定リターン:年5%

30歳から60歳まで運用を行うと、運用期間は30年です。リターンは選択する運用商品によっても異なるため一概にはいえませんが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオが参考になります。

2020年4月1日からの5ヵ年間のGPIFの基本ポートフォリオは、「国内債券」「外国債券」「国内株式」「海外株式」の4資産、それぞれ25%となっています。長期的な平均リターンの中央値は「5.6%」です。今回は同様のポートフォリオでの運用によって年5%のリターンを目指すと想定し、60歳まで積立て運用を続けた場合をシミュレートします。

結果は以下のとおりです。

  • 積立元金(掛金累計額):4,320,000円
  • 運用益:5,667,104円
  • 運用結果:9,987,104円

積立した金額の2倍以上の運用益を30年間で得られるシミュレーション結果となりました。(運用結果によっては、掛金額を下回る可能性もあります。)

注意すべき点もしっかりと踏まえながら、大きな税制メリットあるiDeCoを有効に活用されることをおすすめします。

※当記事は2022年10月現在の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取り扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

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